キャリー・トレードとヘッジ・ファンド

キャリー・トレードとヘッジ・ファンド

為替市場でキャリー・トレード(carry trade)という取引手法が注目されたのは、1998年のアジア危機である。ヘッジ・ファンドという、当時勃興してきた投資ファンドの採用した手法として知られるようになった。その後、ヘッジ・ファンド業界は、1998年のロシア危機以降ヘッジ・ファンドの運用が低迷し、金融市場での力が落ちていたが、2002年頃から再び金融市場で力を持ち始め、為替の市場でキャリー・トレードが採用されるようになった。

 

キャリー・トレードとは一般的な呼称である。基本的には、投資期間での確定(あるいはほぼ確定)した利益(キャリー)をバッファーとして、投資終了時点でのリスクに立ち向かう取引である。この取引の最終的な損益は、時間ファクターを除けば、(キャリー分利益)バリスタからのペイオフとなる。満期時点のリスクからのペイオフでの損がキャリーよりも大きければ、このキャリー・トレードは損失となる。

 

簡単な例として、為替ではないのだが、銀行が行うキャリー・トレードを掲げよう。イールドカーブ(利回りのカーブのこと)が正のスロープ、つまり、短期金利が長期金利よりも低い状況では、銀行が短期で借入れをして長期で貸出を行うことで、長短金利差(キャリー)を稼ぐことができる。ここで、銀行は資金の調達を短期で頻繁に繰り返す。当初の期間損益は黒字(たぶん大きな黒字であろう)である。しかし、短期金利が上昇してくると、調達金利が当初の長期の貸出金利を超えることもあり、そのときには、期間損益がマイナスになることもある。

 

逆に、短期金利が上昇せずに低金利であれば、期間損益が大きなプラスとなる。もし、ここでのファンディングのミスマッチを取らなければ、長期資金を調達し、そこでのコストに利ザヤを上乗せしてそれを貸出金利とすることで、取引期間はその利ザヤ分だけ銀行の収益となる。一方、調達と運用のミスマッチを行えば、キャリーが付加されて、ミスマッチでないときよりもより大きな利益を稼ぐことができる。こうした期間ミスマッチは、市場リスクとして銀行のモニターの対象となる。

 

こうしたキャリー・トレードは、貸出を使わずに行うこともできる。例えば、貸出の代わりに預金を行うのである。こうした手法は、1970年代のデリバティブがない時代に、日本の商社などで投機的取引として使用された。例えば、6ヵ月の投資期間に対して金利が下がると予測する。すると、3ヵ月の借入れをして6ヵ月の預金をする。3ヵ月後、再び同額を借り入れるといった具合である。